ガスマスク陰キャブログ

暇を潰せよ!ここで!

アンパンマンを裏切っちまった小1の俺 

 小坊の頃、上級生が下級生を歓待する祭りみてえなもんがあった。俺はあの時小1で、小5の兄ちゃん姉ちゃんが催したイントロクイズに挑戦してたんだ。ただでさえ刺激のない田舎で、さらに幼いから触れられる娯楽はテレビぐれえのもん。だから俺はワクワクしてた。

 イントロクイズが始まった。4つぐらい上の兄ちゃんに生まれて初めて見るヘッドホンを着けられ、ラジカセのスイッチが押され曲が流れる。

 

そーだー、うれしいんーだー、いーきるよーろーこーびー

 

 アンパンマンマーチ!流れた歌詞の初っ端、「そ」の時点で分かった。でも俺は言えなかった。兄ちゃん姉ちゃんがさあ答えは?と優しく聞いてくれても俺は小さく、分かりません、としか答えられなかったんだ。

 当時小1の俺はアンパンマンを見ていた。まだ意識もおぼつかねえ頃から見てたとしたらアンパンマン歴7年、ちょっとした中堅ファンだった。だが裏腹に俺は小1でアンパンマンを見ているという事実が恥ずかしかった。周りがさもアンパンマンを見てねえみてえな面をしてやがったからだ。ダチを始めとして周りが見てたのは戦隊に仮面ライダー、目ざとい奴はポケットモンスターダイヤモンドパールなんか気にしてた。漫画雑誌だってテレビくんなんてもんはもう見ねえ。男ならコロコロ一択。ボンボンは俺らの地域にはなかった。そんな中、俺一人がアンパンマンをまだ見ているなんて言えるはずもない。何があったって現役アンパンマン視聴者だということは知られちゃいけなかったんだ。

 そんな俺に、イントロクイズでアンパンマンマーチが耳に飛び込んできやがった。本当は答えたかった。でけえ声で曲名を当ててやりたかった。だけど俺は同時にこう思った。

 

これ答えちまったら俺がまだアンパンマンを見ている幼稚な奴だと思われんじゃねえか…?

 

 そんな思いが恥を生んで、結果俺は分かりませんとしか言えなかった。

 結局俺以外の奴があっさり正解した。そいつは女でまだ赤子の弟がいる姉だった。弟が見るついでに自分も見ていると言える立場の奴だったんだ。俺にも下の兄弟がいたら。俺に恥を忍ぶ勇気があれば。当時は毎晩そう悔いて止まなかった。もちろん今じゃこんなこと気にもしてねえが、ただ一つ気がかりなのは・・・俺がアンパンマンを裏切っちまったってことだ。だから、今更遅いかもしれねえけど、お前には伝わんねえだろうけど、俺の勝手なんだけど、言わせてくれ。ごめんなアンパンマン